
キッチンや浴室と比べると、重要視されることが少ない洗面所。
しかし、洗面台の役割や機能は日々進化を続け、生活リズムや動線を考慮した洗面所は、毎日を快適に変えてくれます。住まいの間取りや動線を決める前に、洗面所について考えてみませんか。
変わりつつある洗面所の役割
従来、洗面台は洗顔や歯磨きができれば十分な設備でした。収納する物も家族の洗面道具がおさまれば良かったので、限られた収納でも間に合っていたのです。
それがシャンプードレッサーの登場とともに一変します。
朝にシャンプーをし、髪型を整える「朝シャン」が流行。女性にとって洗面台は「ドレッサー」として認識されるようになりました。
ヘアーアイロンや細々としたメイク道具が増え、それらを収納できる「収納力」が洗面台にも求められるようになっていきます。

その後は女性の社会進出が進み、結婚出産後も働き続けるワーキングマザーが増えました。家事は妻がひとりで担うのではなく、家族でシェアするものという認識が広まりつつあります。
このような流れの中で、見直されているのが洗面所の役割です。
これからの洗面所は「家事シェア」と「収納力」に注目
なぜ、洗面所と家事シェアが関係しているのでしょうか。それは、日本の狭い住宅事情が影響しています。
日本の住まいで洗面所は浴室と隣接しているケースが多く、脱衣所を兼ねる間取りがほとんど。
必然的に洗面所には洗濯機が置かれ、洗面所が狭くなる原因のひとつになっています。
しかし、これを弱点と捉えるのではなく、うまく活用していくことが家事シェア成功のポイント。動線の短さを逆に生かしましょう。
例えば、洗濯家事はドラム式洗濯乾燥機を導入し、乾燥まで完了させます。
さらに、入浴後に使うタオルや下着、パジャマ類は洗面所内に収納しておく……こういった家事の流れをつくっておけば、洗濯物の一部は洗面所内で完結でき、入浴時の段取りもスムーズです。

また、浴室と洗面所が隣り合っていれば、洗面所に置きたい日用品ストックや掃除道具も多くなる傾向に。
洗面所が多用途に使われるほど、収納量が必要になります。
加えて、消耗品のストック補充も立派な家事のひとつです。在庫が切れたときに誰でも補充できるように見やすく整理し、情報共有できる仕組みをつくっておきましょう。
このように洗面所は身だしなみを整えるだけの場所ではなくなりました。
家族で協力して家事をこなすための「ユーティリティ」としての機能を担うようになったのです。
ファミリーなら欲しい「セカンド洗面台」
もし、予算や広さに余裕があればおすすめしたいのが「セカンド洗面台」です。
セカンド洗面台とは、メインの洗面台とは別の場所に設置する2つ目の洗面台のこと。朝の混雑を緩和できるメリットがあります。
また、感染症流行の懸念からも帰宅後はすぐに手を洗いたいものです。
玄関周辺に洗面台があれば、スイッチやドアノブに触れることなく手を洗えます。
セカンド洗面台はゲスト用の洗面台としても便利です。脱衣所を兼ねた洗面所に来客を通したくない場合にも重宝するでしょう。

生活のシーンをイメージし「動線」を整理する
洗面所を住まいのどこにつくるかも重要なポイントです。何を優先するか、セカンド洗面台を設置できるか、などによっても洗面所の設置場所は変わってきます。
洗面所の場所を「動線」から考えてみましょう。
動線とは、人の動きを線で結んで表現したもの。図面上に自分の日常的な動きを落とし込んでみるとイメージしやすくなります。
例えば、動線が混み合う朝。
洗面所で洗濯機を回しながら洗顔し、朝食の支度やゴミ出し。家族が起床すれば、家族の生活動線も加わります。
生活のシーンを具体的に想像しながら、間取りと動線を整理すれば混雑を緩和できるでしょう。
動線を考慮した洗面所の設置場所
動線を整理しながら、どこに洗面所があれば使いやすいかを考えていきましょう。
洗面所の配置でおすすめのプランをご紹介します。
料理と洗濯の同時進行を考慮したプラン
家事をするときは、複数の家事を同時進行することが多いものです。特にキッチンと洗面所の往来は頻繁になります。
家事の同時進行に配慮するなら、キッチンと洗面所を近くに配置し、壁ではなく扉で仕切りを。引き戸にしておけば忙しい時間は開放しておけるので、行き来しやすく便利です。

洗濯家事を優先したプラン
戸建て住宅の場合、洗濯物は2階のベランダに干すことが多くなります。
2階に浴室と洗面脱衣室を設置し、クローゼットを近くに配置できれば最短動線で洗濯家事を終えることが可能です。
小さくてもアイロン掛けをできるスペースや吊り式の室内干しがあれば、さらに便利になるでしょう。
2階に洗面脱衣室を設置する場合は、1階にも手洗い場を忘れずに設置してください。

洗面所と脱衣所を分けたプラン
洗面台の設置が1台の場合、できるだけ玄関寄りに配置したいものですが、間取りの関係でうまくいかないこともあるでしょう。
そのような場合、洗面所と脱衣所を別々に配置する方法もあります。洗面台だけを玄関寄りに配置できれば、浴室と脱衣室は住まいの奥にあっても問題ありません。
メリットは他にもあります。
家族が入浴時でも他の家族は洗面台を使えるので、思春期のお子さんがいるご家庭では便利な間取りと言えるでしょう。
もうひとつは、来客時にも洗濯機や脱衣カゴが目に触れないこと。生活感を隠せるメリットもあります。

家族の健康と家事をサポートする洗面台
普段何気なく使っている洗面台は、私たちの暮らしを支える重要な設備です。
そして、工夫次第で生活をもっと便利に快適にしてくれる設備でもあります。
使いやすい洗面所は間取りや動線も重要なポイント。ぜひリノベーションのプロにご要望をお聞かせください。